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7.5「ピースウォーク」取材、現場最前線で見た光景(2)
「デモ隊のかたは前に進んでください」
「ふざけんじゃねーよ! お前らが進めなくしたんじゃねーかっ!!」
「帰れ! 帰れ! 帰れ! 帰れ!」
交差点の手前で運転手を含めた乗員3人全員が逮捕されてしまい、動くに動けなくなったデモ隊先導トラックの前で、いかにも訳も分からず単に動員でかり出されただけという感じの制服警官が、この場の状況を全く読めていないような呑気な声で言ったりしたんもんだから、興奮しきったデモ隊参加者たちはますます神経を逆撫でされ、事態はさらに泥沼化していたという7月5日午後4時10分過ぎなのであった。そうこうするうちにトラックの荷台上には警官たちがどしどしと上がり込み、その周囲を機動隊員たちが着々と取り囲んでいく。
すでにトラックから降りていた私は、戻って再び荷台に取り付こうとした途端、「はい、危ないですから下がって下がって!」と、またまた後ろから機動隊員に背中のディパックを引っ張られた。
「誰が危ないんだよ」と思わず言った。「そもそも目の前にいるのってお前らの仲間ばっかりだろうが!!」
ついでに小突いてやろうかと思ったが、それは思いとどまった(ことが結果的によかったと後で判明する)。しかしこうなったらもう、見晴らしのいい広い交差点なんだから、いっそのこと「市街戦」に持ち込んじゃったほうがいいのではないかとも個人的には思ったくらいだ。幸い人数的には警官よりもデモ隊のほうが多いし、しかもガイジンの強そうなのも一通り揃っている。
しかしながら、スタート当初からトラック周辺の一番騒がしい集団をしっかりフォローしてきたデモ主催者側のスタッフたちは、実に敬意を表すべきことに、こうした混乱状況下でも極めて冷静に対処していた。警察側に対して激しく詰め寄りながらも決して感情的にはならず、しばし交渉しては振り返って「はい、ここはまず押さえて押さえて!」「ひとまず前へ動いて!」といった感じで、懸命に状況の沈静化に努めていた。
その甲斐あってか、騒ぎがおっ始まってから十数分後、デモ隊は元通り派手に楽器を鳴らしながら、すぐ目の前に迫っていたゴールの中島公園に向かって進みだした。
もちろん、トラックはその場に停まったままだ。ふと見ると、運転席のすぐ下の路上には粉々に砕かれた窓ガラスの青い破片が散らばっていた。つまり警察はガラスをぶち破って運転席に突入したのだ。
中島公園の入り口も、青いヘルメットと白銀の盾の列で固められていた。が、公園の中まではさすがに彼らも入ってこない。
全身を黒いコスチュームで目元まで覆った参加者は、デモの間ずっと手にしていた「ピーポくん」(警視庁公式認定マスコット)人形を機動隊や警察の前でぶら下げてからかっていたが、公園に入るや、とうとうそれを足元において蹴りだした。転がってきたピーポくんを、参加者たちがサッカーのパスまわしよろしく蹴りまわす。一度だけ私の足元にも転がってきたので、思いっきり先まで蹴り飛ばしてやろうとしたが、カメラで撮影しながらの体制では上手くいかずにあえなく空振り。こういう時は取材者って不利だなと思う。
終着点の広場まで到達するや、とうとうピーポくんの「公開リンチ」が始まった。蹴るだけでなく、踏んづけたり水をぶっ掛ける者も出るなど、警察への怒りをまさに文字通り「踏んだり蹴ったり」な行為でピーポくんにぶつけていたのであった。もっとも、さすがに最後は一人の女性が「かわいそうだからやめましょうよ」と、たまりかねたような表情で諌めたりもしていたけど。
ようやく落ち着いたところで、デモ主催者がハンドマイクで説明を始める。
この段階で判明していた逮捕者はDJと運転手の2名。しかも運転手に関しては一応「公務執行妨害」という理由は告げられたものの、前述の通りDJについては何ら理由の提示はなかったという。いずれにせよ極めて不当な逮捕であり、主催者側はこれから札幌中央署まで抗議にいくつもりだ――といった説明がほぼ終わったところでさらに新たな情報が入り、実は逮捕者はもう1人のDJを含めた3名にのぼっていたことが知らされる。最初の1人の事件後に「なぜ逮捕されたのかわからない」と荷台から私に語ってくれた彼も、やはり捕まっていたのだ。
どうもこのぶんじゃ、実際にはあと何人逮捕されてるかわかんないな……と思いながら主催者や主要なデモ参加者たちとともに向かった札幌中央署の玄関前まで向かったところ、案の定、やはりもう一人の逮捕者がいたことが判明した。しかも、それは私とはある意味で同業の「記者」だった。(岩本太郎)
(つづく)
国際民衆連帯ワーキンググループ 記者会見
9日午前9時半過ぎから、G8サミットを問う連絡会主催「国際民衆連帯ワーキンググループ」による記者会見が、北海道大学のメディアセンターで行われた。
声明は、今回のG8サミットを受けて、気候変動締約国会議以来さらに後退したこと、弱体化する世界銀行の気候投資基金承認の動き、食糧危機、多額の借款を含むODAの実態に懸念を表するもの。
会見場で声明を発表した人および組織は以下の通り。
○ Walden Bello (フィリピン) Focus on the Global South
○ Janet Redman (米国) Institute for Policy Studies
○ Joseph Zacune (英国) Friend of Earth International
○ Myriam Bourgy (ベルギー) CADTM (Committee for Abolition of the Third World Debt)
○ Md. Shamsuddoha (バングラデシュ) Equity and Justice Working Group Jubilee South
○ 秋本陽子(日本) ATTACジャパン
報道関係者からの質疑に対しては、市民団体の力が強くなり、IMF、世銀、WTOが弱体していると述べ、今後もG8そのものを認めない、存在を認めないという立場で抗議活動を継続していくとした。また、来年、イタリアでは数十万人規模の抗議行動が予定されていると述べた。
G8サミットによる「決定」についての批評・評価に信憑性をつけるものとして、途上国における現場での経験などの有無を問われた際には、各地で世界銀行のプロジェクトに対して抗議活動を行ってきた、と述べるにとどまり、議論を後ろ盾する背景までを表明するには至らなかった。
市民サミット2008シンポジウム「北海道発、世界の未来」
7月7日18時30分から札幌コンベンションセンターにて、市民サミット2008シンポジウム「北海道発、世界の未来」が行われた。グローバル問題と北海道・アイヌモシリの問題をつなげながら、環境・農業・地域自立のそれぞれの課題とそのつながりを考えるという主旨である。パネラーは、ミニー・デガワンさん(変革のための先住民族ネットワークプロジェクト・コーディネーター)、レイモンド・エップさん(メノ・ビレッジ長沼)、黒沢信道さん(トラストサルン釧路)、ヘンリー・サラギさん(ビア・カンペシーナ)の4名、司会は鈴木亨さん(北海道グリーンファンド)である。
ミニー・デガワンさんは、先住民族からみた環境問題(生物多様性、気候変動)というテーマでさまざまな国々の事例を報告した。気候変動の問題が「科学的」に議論されるあまり、先住民族をはじめとした地域の「文化」の影響、人々の「アイデンティティ」の影響について考慮されていないことや、地球温暖化にかかわる「炭素の吸収」の問題が一部の多国籍企業の利益に回収され、土地の収奪など先住民族にかかわる深刻な問題を引き起こしていることなどを話した。
レイモンド・エップさんからは、気候変動、エネルギー問題、土壌の劣化と食糧危機に向けた非暴力の原則づくりというテーマで報告があった。今日、問題となっているさまざまな環境問題が、資源が無限にあるというアメリカ的な前提が引き起こしたものであり、その反省から、CSA(地域が支える農業)を展開することになったと話した。そして、自立した北海道を作り上げるためには、「真実を語り、不正義を告発する」ことによって、人間らしい生活を送ることが大切であると訴えた。
黒沢信道さんは、トラストサルン釧路(サルンはアイヌ語で湿原)の活動と獣医としての立場から釧路湿原の保全と地域産業に関して報告した。国営農地開発、住宅地の拡大による釧路湿原の量的な減少と、周辺丘陵地における森林伐採、人工林化、上流での河川改修(直線化)による土砂の流入、酪農の多頭化と集約化に伴う富栄養化がもたらす湿原の質的な悪化(湖の水深が浅くなる、水草の減少、アオコの発生)が報告された。その中でトラストサルン釧路の活動(自然観察会、地元産の広葉樹の植栽など)が紹介され、地域産業と釧路湿原のよりよい関係の構築の目指していることが報告された。
ヘンリー・サラギさんは、ビア・カンペシーナの設立経緯の背景にあった新自由主義的政策による農業の危機をさまざまな事例から報告した。例えば、WTOの理念に沿うことによる農産物の貿易自由化によって低賃金の農民の生活が破壊されていること、一部の多国籍企業によるアグリビジネスの進展がそれを後押ししていることなどである。このような状況を変えるためには、小規模農家による自立した農業が必要であり、そのための戦いを非暴力、議論によってビア・カンペシーナでは行っていきたいと主張した。
全体討論では、グローバリズム化に対抗する、その地域に根ざしたローカルなしくみを作り続けていくことによって、オルタナティブな北海道のあり方が目指されるのではないかという議論になった。最後にコーディネーターの鈴木氏は「環境」という漢字の意味を次のように解釈して話をした。
「環境」という文字は、環(わ)の境と書くことから、それは地域、コミュニティ、ローカルエリアのつなぎ目という意味を持っているのではないか。現在、グローバル化の問題とは、その境界がとられてしまうことによって引き起こされる問題ではないだろうか。地域、ローカルから物事を考え、自立し、連帯することで未来が見えるのであろう。
1992年「環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)」を契機に「Think Globally Act Locally」という言葉が地球環境問題を考えるスローガンとなったが、このスローガンは同時に地球環境問題自体をグローバルに考える志向性を生み出し、ローカルな思考を拒絶することに繋がった。確かに地球規模で引き起こされる環境問題をグローバルな視点で考えることも重要である。だが、本シンポジウムで議論されたことは、グローバルな影響を受けながらもそれに対してローカルに考え、実践することの重要性であろう。「資本主義の実験場」であった北海道は、グローバリズムの影響(そこには光と影がある)をより直接的に受けるはずである。グローバリズムの波に飲み込まれるのか、もしくはオルタナティブを思考できるのか、未来の北海道を考え実践することが、日本や世界の未来に繋がるのではないだろうか。
(GPAM:MN)
マスコミは特権階級? 豪華なプレスキットにビックリ
ビール、天ぷら、寿司、タラバガニ。世界主要8ヵ国が集う洞爺湖サミットを取材してもらうとなると、日本政府のメディア待遇もまた違ったものになるらしい。
7月7日~9日の洞爺湖サミットの開催に合わせ、北海道虻田郡留寿都村のルスツリゾートに国際メディアセンター(IMC)が設置された。ルスツリゾート従来の宿泊施設に加え、仮設の建築物「IMCザ・メイン」がメディアの報道拠点中枢となる。
サミットを取材するといっても、G8首脳が会議をする洞爺湖湖畔までは車で4、50分の距離。メディアは希望する全員がG8首脳会合などの主だったサミット行事を取材できるわけではなく、一部のメディアが専用バスに乗って代表取材する。代表取材したメディアがIMCに待機する他メディアに写真や首脳発言などの情報を提供する仕組みだ。
IMCに入場するためには外務省発給のパスが必要となる。どんな警備がされているのかは書けないけれど、とにかく厳しい。
■「こんなにくれるの?」プレスキット
入場口をパスしてすぐ、プレスキットをもらうことができる。中身の一覧があるので紹介しよう。
消しゴム、紙管ボールペン2本、レポート箋、クリアフォルダ2枚、テープのり、マイはし、リバーシブル風呂敷(使い方DVD付き)、メモパッド、充電式電池、USBライトの10品。
もう一品、厳密にはプレスキットではないけれども、時計メーカーから贈呈品の名目でプレスキットと一緒に腕時計まで渡される。いずれの品も環境に配慮した技術を使っているのだとか。
■食事は無料 なんとお酒も
IMCに一度入ると気軽に外に出ることができない。警備上の観点や施設自体が巨大であるからだ。そのためメディアはIMCで食事を摂る。施設内には「軽食スペース」や「ドリンクスペース」と呼ばれる一角が多数あり、無料でジュースやお茶などのペットボトル飲料、マフィンやケーキなどのお菓子やカップラーメンを食べられる。
また、施設内の一部レストランでも食事が提供される。8日に筆者が訪れたときにはビールとジンギスカンが無料のイベントもあった。
夕食時、あるレストランにはメディアの行列ができていた。記者会見が開かれるのを待っているわけではない。「タダ食い」をしたい行列だ。店員に「10人です。9人はあとから来ます」と伝える場所取り役もいる。このレストランはビュッフェ形式で、冒頭にあげたように、天ぷらや寿司などの豪華な食事が味わえる。お酒も各種が揃う。ここにも「仕事のあとの一杯」をもとめて列ができる。くどいようだがいずれも無料だ。
■たしかに便利だけれども……
こうした日本政府のメディア待遇は、いくら国内外のメディアが多数駆け付けるとはいえ、「おもてなし」の域を越えているのではないか。「せっかくだから」と散々IMCを利用させてもらってすごく後ろめたいが、あえていいたい。――ちょっと贅沢すぎません?
※添付写真キャプション:「IMCザ・メイン」は奥の建物。環境に配慮して冷房は雪を使用(いずれも8日、虻田郡留寿都村の洞爺湖サミット国際メディアセンターにて、筆者撮影)
(JanJan 黒井孝明)
【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】市民キャンプ地「一触即発」の舞台裏
筆者らインディーズ・メディアの面々は洞爺湖近くの豊浦町に約200人がテントを張った「市民キャンプ」を訪れた。キャンプ地の入口には大手メディアと警察関係者を拒絶するゲートが。「反G8」行動を控え、緊張感漂うキャンプ地の様子を報告する。
◇ ◇ ◇
「ワゴンが4台停めてあった。マルキはいない」。市民キャンプ地を抜け出して車で周囲を見回ってきた市民活動家の男性が声を張り上げた。「マルキ」とは機動隊のこと。話を聞いていた活動家らの顔は険しかった。
北海道虻田郡豊浦町。人口4000人程度のこの地に「G8を問う連絡会」のメンバーなど市民活動家ら約200人がキャンプを張った。洞爺湖サミット開催に合わせ、彼らが宿営地に選んだのはサミット会場に近く、JR室蘭本線が通る礼文(れぶん)駅から車で5分の距離にある豊浦森林公園キャンプ場だ。
7日正午ごろ、雨に濡れたキャンプ場。市民活動家らには静かな緊張感が漂っていた。午前中のミーティングで海外からの参加者が「豊浦まで電車で行って他のキャンプと合流しよう」と提案したのだ。キャンプ全体の予定にはなかった。
キャンプ地から最寄駅のJR礼文駅までは徒歩で30分程度。木々に囲まれた途中の道には警察車両とみられる白塗りの車が各所に待機していた。「少人数で出かけては危ない。このキャンプ地を出たら、警察はたちどころに逮捕できる」。ミーティングに参加していた一同に不安が広がった。
集団で移動した場合はどうなるか。警察はデモ行動とみなすだろう。デモ行動には関係各所への許可申請が必要だが、新提案は許可されていないデモコース約4kmを歩くことになる。
「途中で一部の参加者が逮捕された場合、このキャンプ地はどうなる」と中年男性が発言した。キャンプ地で待機する活動家も一網打尽にされる。少数の行動が全体に影響を及ぼす。海外参加者に慎重を呼び掛けた。
海外参加者は首を縦に振らなかった。5日の札幌デモで4人が逮捕されている。彼らの逮捕が不当であることをメディアを通じて明らかにしなければならない、と主張した。
■警察や大手メディアの進入をはばむキャンプ入口
ミーティングは午前10時ごろに集会所で始まったが、1、2時間を経ても議論は平行線をたどっていた。彼らの集まりには司会役はいても絶対的なリーダーは見当たらない。大切なことは全体で相談し、互いを尊重することを意識して議論するように決められている。
結局、昼食を終えてから議論の続きをすることになったが、ほとんどの人間が炊事場には行かず、集会所の前で話し合った。しばらくしてから、海外参加者がキャンプ場の出入り口へ歩き始めた。それにつられるように足音が増えていく。
「捕まれば最低でも3週間は出てこれない。日本の人にはぜひ参加を控えてほしい」と日本人スタッフがキャンプ場出入り口に集まった日本人に呼びかけた。最終的には本人の判断に任されるのはわかっていても、言わなければならないことだったろう。「私は行かない」と女性の声。「警察にはデモではなく、遠足だといえばいい」。「警察やメディアと直接出会うまで横断幕は隠したほうがいいのでは」。次々と声が上がった。
4、50人がキャンプ地を出発した。警察やメディアに顔を知られたくない活動家は布で覆う。横断幕は持たないことになった。雨脚が強くなっていくなか、通訳の日本人数名を交えた集団は小道に消えていった。
筆者は「どうして参加しなかったのか」とキャンプ地に残った若い日本人男性に聞いた。「やはり危険だから」と答える。「危険なのは海外参加者よりも日本人」だからだという。筆者らがそのときいたキャンプ管理棟では、管理者が役場に“遠足”が急に始まったことを伝えていた。
しばらくして「いまパトカーの音が聞こえなかった?」と一人が言った。「聞こえた聞こえた」と応じる声があった。
◇
市民キャンプの運営スタッフ中枢にいるAは常に携帯電話を握っていた。「足止めされた?」と携帯電話に向かっていう。“遠足”に参加した人間と話していた。彼らの状況を聞いている。
どうやらキャンプ地から1kmほどの地点で、警察に道をふさがれたらしい。途中で引き返してきた活動家が詳細な状況を報告した。道をふさいでいたのは機動隊。人数はわからないが、警察は“遠足隊”が引き返すなら、誰も逮捕することはないといっている。
いつでも出られるよう出入り口近くに車を待機させたAがテントに入ってきた。「まずいことになった。道警(北海道警察)から電話があった」。道警はデモの許可申請書を現地に持ってくるよう求めているという。また、キャンプ参加者の行動を管理できないのか、とも聞かれた。「許可申請書は出せない。出せばBとC(いずれも不詳)が責任を問われる」とAはうなった。そして携帯を握り、現地に連絡した。「絶対に手を出すなといってくれ。みんなを後方に引かせるんだ」。
“遠足隊”は三々五々キャンプ地に戻ってきた。無事を喜び合う歓声や拍手は聞かれなかった。一度、警察車両がキャンプ出入り口に近づいたが、しばらくして戻って行った。この行動で逮捕者は出なかった。
■キャンプ地にバスで向かう途中で検問
筆者はキャンプ地からJR礼文駅へ向かう車中、キャンプ場管理者と話をした。車窓からは道々に警察車両が停まっているのが見える。通り過ぎる車を逐一確認している様子がうかがえる。一連の騒ぎを見た彼が話したことをまとめると次のようになる。
「雨さえ降っていなければキャンプの人たちと交流しようと思った。一人ひとりは悪い人たちではない。
市民キャンプの話がきたときは住民説明会に40人も集まった。(デモと警察の衝突のような)こういうことを心配していた。物々しいものを子どもたちに見せたくない。
本当は(デモではなく)礼文のきれいな自然を海外の人やマスコミの人にみてもらいたかった。豊浦森林公園はこんなにきれいなキャンプ場なんだよ、と」
(JanJan 黒井孝明)
Youth G8 Project 代表 インタビュー
「市民サミット」のクロージング・セッションで、若さあふれる、歯切れの良いスピーチを行った林雄太氏に、インタビューさせてもらった。農工大学の大学院生22歳で、NGO団体A SEED JAPAN(1992年設立)の代表を務める。今回のサミットに向けて、すでに環境副大臣に提出したという「ステートメント」は、1年半の間に約7回行われた「ステーメント作成合宿」でのワークショップや議論を通して、ユースの提言がまとめられたものとなった。
林さん自身は、高校生の時に環境問題に目覚めて、それを大学の専攻分野に選んだ。大学で環境サークルに属しながら、より積極的なアクションを起こす機会を探していたところ、NGOのA SEED JAPANに出会ったという。それ以来、情報収集やプロジェクトなどを通して、積極的な活動に参加。昨年3月からは「温暖化と生物多様性プロジェクト」のプロジェクト・マネージャーも務めている。今後の活動としては、2010年に名古屋で予定されているCOP10へ向けて、さまざまな提言活動や若者への啓蒙活動を行っていくと抱負を語った。
(文:コリンズゆうか 撮影:簗瀬裕子)
市民サミット閉幕
2008年G8サミットNGOフォーラムおよびG8サミット市民フォーラム北海道主催で、3日間にわたって開催された「市民サミット」が、札幌コンベンションセンターにて、8日に閉幕した。クロージング・セッションの行われた午後には、およそ180名前後(本記者推定)の市民、NGO団体関係者、報道関係者が参加した。閉会の辞を述べた、2008年G8サミットNGOフォーラム代表の星野昌子氏は、日本政府の姿勢に少しずつだが変化が見られるとし、それにはこうした市民による動きが少なからず影響を与えたためだろう、と充実感のこもったスピーチをした。一方で、債務帳消しの議論が出てから10年たっても、進展が見られないことなどを例に挙げ、今後も「紳士的に粘り強く」対話を続けていきたいとした。
また、クロージング・セッションには、期間中に分科会やワークショップ、セミナーなどの運営等に参加してきた14団体/個人によって、3日間を締め括るレビュースピーチが行われた。14団体/個人と議論の分野は、以下のとおり。
□ G8を問う連絡会(小倉利丸氏)
□ 市民外交センター(上村英明氏):人権・平和
□ 先住民族サミット(木幡カムイサニヒ氏):先住民族
□ ゆうばり再生市民会議(熊谷桂子氏):夕張と債務
□ Japan Volunteer Center = JVC(西岡路矢氏)
□ 日本自然保護協会 = NACS-J(道家哲平氏):生物多様性
□ 生物多様性フォーラム(山下洋氏):G8からCOP10へ
□ SANSAD/インド(Anil Singh氏):貧困と国際ネットワーク
□ 日生協保健部会(北嶋信雅):保健・医療
□ Africa Jubilee South(Noel氏):アフリカ
□ 毎日新聞(横田愛氏):メディア
□ Youth G8 Project(林雄太氏)
□ azorook(草野竹史氏):ボランティア
□ ACE(岩淵由香氏):キャンペーン
中でも特に、Youth G8 Projectによるスピーチとパフォーマンスに会場に盛り上がりが見られた。環境問題について、未来が確約されるような目標設定の必要性を訴え、「未来は黙っていても来るものではありません」とスピーチを締め括るともに、正面に集まった8名のユースが8カ国の国旗を持ち、“Is this leadership?(これ、リーダーシップなの?)”というメッセージを投げかけた。
最後には、市民サミット参加者が会場中心に集まり、配布されたうちわやパンフレットなどを振っている様子を写真撮影するという和やかな雰囲気で終了した。
(文:コリンズゆうか 撮影:簗瀬裕子)
世界を飢餓から救う方策はあるか:エンディングハンガーゲームから学ぶ
NGOハンガーフリーワールドによる「エンディング・ハンガー・ゲーム」が7月7日午後7時から札幌コンベンションセンターにて行われた。参加者は、シミュレーション・ゲームを通して、飢餓・戦争のない世界を創ることの困難を体験した。
エンディング・ハンガー・ゲームは、世界をいくつかの地域に分け、それぞれの地域を食料事情、保有金銭的資金、戦争への傾向、乳児死亡率などについて特徴づける。各地域に置かれたプレーヤーは、国連や他の地域のプレーヤーと交渉しながら自分の地域の問題を解決するようにつとめる。たとえば、地域全人口の20%分の食料供給しかないなら、残りの80%は他の地域から「購入」する、またその「購入」にあたり、経済的に富裕な地域に対して援助を請う、という具合である。他の地域担当のプレーヤーと多様な交渉をしながら、すべての人に教育機会が与えられかつ戦争・飢餓・貧困のない「世界」の創造を模索する。
NGOハンガーフリーワールドの一人、笠原さんによると、飢餓は天災ではない。全世界の年間穀物生産量は21億トン。これを世界人口で割れば、一人当たり年間365Kgの食料供給が可能となる。また全世界の年間軍事費の総額は1.1兆ドルだが、全世界で必要な食料を調達するには約380億ドルあればよい。
食料調達は為替変動など国際金融状況によっても左右される。たとえば、食料高騰の影響をもっとも強く受けるのは発展途上国である。世帯収入の50%から80%が食料に使われているからだという。また飢餓の直接的影響は子供の発育不良として現れる。さらに発育不良を経験した子供が親になると、発育不良の子供を生む傾向が高いという。こうした「飢餓の連鎖」を避けるためにも、飢餓対策が急務だという。
(GPAM DN)
「札幌宣言」に向けて〜7月7日の市民サミットより〜
7日も札幌コンベンションセンターでは、市民サミットが開かれている。ここでは、午前中に開かれた会議の一つ、「世界市民の声〜貧困をなくすために〜」の模様をごくわずかではあるが報告したい。
この会議は、準備された草案をさらに練り上げた上で、「札幌宣言」(Global Voices to End Poverty)を採択することを目的としたものである。ラウンドテーブルには議長を含め約30名のNGO代表者らが集まり(19名は海外の方々)、
各論についての説明・質疑応答から、全体のとりまとめについての意見交換まで、熱のこもった議論が続けられた。
この会議における重要な共通認識は、札幌宣言(草案)の冒頭部で明瞭かつ憤然と書かれている。G8の指導者たちは世界を変えると様々な誓約を積み上げてきた。しかし、その誓約は「単なる言葉の羅列に、そしてその言葉の羅列の再確認へと堕し、必要とされる行動へと翻訳されることはなかった」と。そして、その不公正な世界を「作り、維持し、導いてきたのはG8」であると。
各論についての議論は非常に多様であった。医療・福祉に関わるものが多かったが、食糧危機、教育に関するもの、そして端的に「貧困」をテーマとしている議論も複数存在した。
たとえば、オルタモンドhttp://altermonde.jp/の田中徹二氏は代替的な資金メカニズムについて、世界の全通貨取引に0.005%の課税をかけるCTDLの構想について論じた。ODAとは異なるシステムの構築と同時に投機マネーの暴走を抑制する利点などについても説明された。他のどの報告も、問題点の指摘と具体的な方策が挙げられており、具体的な行動を迫る姿勢が貫かれていたように思われた。
議論のなかでは、個別的課題についての提言を拡充する方向もみられた。同時に、それ以上に、G8の正当性を決して認めることなく、説明責任を求め、メディアとの連携も含めて交渉の仕方自体を検討していく必要性を訴える意見もみられた。
不公正な世界を創り出してきたG8の誓約不履行は、ある意味では当然の帰結なのかもしれない。そこには、今直面する問題にまさに具体的に取り組み、複雑で多大な制約のなかで活動を続けてきた、市民活動であるからこその苦渋も読み取れる。しかし、この点を踏まえて、さらに具体的に行動していこうとする熱意と強靱さこそが、この会議と宣言文からほとばしっていたように思うのである。
(GPAM Ogino)
国際民衆連帯フォーラム クロージングセレモニー
この7月上旬を通し、G8サミットを問う連絡会の中心的なイベントとして札幌の市民運動を引っ張ってきた国際民衆連帯フォーラムも、いよいよ8日の15:00、クロージングセレモニーをもって終結することに。主催は同連絡会の国際民衆連帯ワーキンググループ、そして開催地は東区民センターの大ホール。参加者は30名ほど。クロージングセレモニーとしては人数はそれほど多くないと判断されたのか、司会の秋本さんも平日の昼間ということで数的には多少残念、と言及せざるを得なかったが、それでも登壇者の発言の内容は反G8の市民運動を締めくくるのにふさわしい熱意と先見性を十分に感じさせるものだった。
まず登壇したのは、今回の一連のイベントでも、既にG8サミットを問う集会や市民サミットなどで発表をしてきたウォルデン・ベローさん。韓国人活動家をはじめとする海外からの参加者に対する相次ぐ入国拒否や拘束、また7月5日ピースウォークでの4名逮捕等に言及し、警察や入国管理など国家権力の過剰な反応を指摘。しかし、これについてベローさんは、権力側がそうせざるを得なかったということは、彼等に対し我々市民運動を恐れさせるということに成功したからで、その意味で運動は成功だった、と強調した。そして、これはG8の政策や方向性が世界の大多数の民衆の利益に全く反することに多くの人が気付くことへのはじまりであると指摘し、運動のさらなる発展を促した。
次の登壇者はインドからの参加で、ジュビリー・サウスを代表するスショバン・バーさん。新自由主義に基づくG8の政策は例え危機に対し解決策を提示しているように見えても実は全く逆効果であり、現在の食糧危機や環境破壊はG8諸国の政策の結果であることを強く訴えた。
例えば、一連の金融や農業の自由化政策や、市場原理主義を強要する「改革」は、公共サービスや福祉のさらなる民営化や削減につながり、それがさらなる貧困につながる過程があることを指摘した。
続いて、韓国からの参加者2名の発表だ。まずは、現在韓国社会を大きくゆるがしている反米国産牛肉輸入運動のリーダーの一人である、キム・アイファさん。そして、韓国民主労組のシン・ニョンフォさんが続いた。2名とも、韓国の運動が単にBSEの問題にとどまらず、米国をはじめとする多国籍企業の横暴から自らの市民生活を守る、という点でより重要な意味を持っていることを指摘した。そして、新自由主義に対抗することの意義を強調し、日本の運動との連帯を訴えていたのが印象的だった。
そして、最後2名の登壇者となった脱WTO草の根キャンペーンの大野さんとVia Campesina のインドラ・ルビスさんは、それぞれの視点から主に農業問題に言及した。G8の政策が地域に根ざす農業の解体につながり、ひいては貧困の連鎖を引き起こす問題を指摘し、市民の力で食に関する決定権を奪い返そう、と力強く呼び掛けた。
全体としてこのクロージングセレモニーは、個別の問題に深く立ち入るというよりはG8の根本的な問題点を再確認し、運動のいっそうの奮起を促すということに主眼が置かれていたと感じる。その意味でまさしくクロージングセレモニーにふさわしいものではあったのだが、それと同時にこれで終わりではなく、運動にとってさらなる挑戦が続くことを認識させる2時間だった。
(GPAM 二階堂)



