市民サミット2008シンポジウム「北海道発、世界の未来」

市民サミット2008 北海道発、世界の未来

 7月7日18時30分から札幌コンベンションセンターにて、市民サミット2008シンポジウム「北海道発、世界の未来」が行われた。グローバル問題と北海道・アイヌモシリの問題をつなげながら、環境・農業・地域自立のそれぞれの課題とそのつながりを考えるという主旨である。パネラーは、ミニー・デガワンさん(変革のための先住民族ネットワークプロジェクト・コーディネーター)、レイモンド・エップさん(メノ・ビレッジ長沼)、黒沢信道さん(トラストサルン釧路)、ヘンリー・サラギさん(ビア・カンペシーナ)の4名、司会は鈴木亨さん(北海道グリーンファンド)である。
 
 ミニー・デガワンさんは、先住民族からみた環境問題(生物多様性、気候変動)というテーマでさまざまな国々の事例を報告した。気候変動の問題が「科学的」に議論されるあまり、先住民族をはじめとした地域の「文化」の影響、人々の「アイデンティティ」の影響について考慮されていないことや、地球温暖化にかかわる「炭素の吸収」の問題が一部の多国籍企業の利益に回収され、土地の収奪など先住民族にかかわる深刻な問題を引き起こしていることなどを話した。 
  
 レイモンド・エップさんからは、気候変動、エネルギー問題、土壌の劣化と食糧危機に向けた非暴力の原則づくりというテーマで報告があった。今日、問題となっているさまざまな環境問題が、資源が無限にあるというアメリカ的な前提が引き起こしたものであり、その反省から、CSA(地域が支える農業)を展開することになったと話した。そして、自立した北海道を作り上げるためには、「真実を語り、不正義を告発する」ことによって、人間らしい生活を送ることが大切であると訴えた。

 黒沢信道さんは、トラストサルン釧路(サルンはアイヌ語で湿原)の活動と獣医としての立場から釧路湿原の保全と地域産業に関して報告した。国営農地開発、住宅地の拡大による釧路湿原の量的な減少と、周辺丘陵地における森林伐採、人工林化、上流での河川改修(直線化)による土砂の流入、酪農の多頭化と集約化に伴う富栄養化がもたらす湿原の質的な悪化(湖の水深が浅くなる、水草の減少、アオコの発生)が報告された。その中でトラストサルン釧路の活動(自然観察会、地元産の広葉樹の植栽など)が紹介され、地域産業と釧路湿原のよりよい関係の構築の目指していることが報告された。

 ヘンリー・サラギさんは、ビア・カンペシーナの設立経緯の背景にあった新自由主義的政策による農業の危機をさまざまな事例から報告した。例えば、WTOの理念に沿うことによる農産物の貿易自由化によって低賃金の農民の生活が破壊されていること、一部の多国籍企業によるアグリビジネスの進展がそれを後押ししていることなどである。このような状況を変えるためには、小規模農家による自立した農業が必要であり、そのための戦いを非暴力、議論によってビア・カンペシーナでは行っていきたいと主張した。
 
 全体討論では、グローバリズム化に対抗する、その地域に根ざしたローカルなしくみを作り続けていくことによって、オルタナティブな北海道のあり方が目指されるのではないかという議論になった。最後にコーディネーターの鈴木氏は「環境」という漢字の意味を次のように解釈して話をした。
 
 「環境」という文字は、環(わ)の境と書くことから、それは地域、コミュニティ、ローカルエリアのつなぎ目という意味を持っているのではないか。現在、グローバル化の問題とは、その境界がとられてしまうことによって引き起こされる問題ではないだろうか。地域、ローカルから物事を考え、自立し、連帯することで未来が見えるのであろう。
 
 1992年「環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)」を契機に「Think Globally Act Locally」という言葉が地球環境問題を考えるスローガンとなったが、このスローガンは同時に地球環境問題自体をグローバルに考える志向性を生み出し、ローカルな思考を拒絶することに繋がった。確かに地球規模で引き起こされる環境問題をグローバルな視点で考えることも重要である。だが、本シンポジウムで議論されたことは、グローバルな影響を受けながらもそれに対してローカルに考え、実践することの重要性であろう。「資本主義の実験場」であった北海道は、グローバリズムの影響(そこには光と影がある)をより直接的に受けるはずである。グローバリズムの波に飲み込まれるのか、もしくはオルタナティブを思考できるのか、未来の北海道を考え実践することが、日本や世界の未来に繋がるのではないだろうか。
 
(GPAM:MN)